2024年3月6日水曜日

変位抜刀霞切り

 

ブルガリアンリズムというものがあります。

ブルガリアの農村の伝わる、

極端な奇数拍子が特徴的な民俗音楽、民謡です。

 

19世紀末から20世紀初頭、西洋音楽家たちは新たな音楽形態を模索する中で、

民俗音楽、民謡に着目し、研究、導入をおこなっていった。

ストラヴィンスキー、ドヴォルザーク、コダーイなどが挙げられるが

何と言ってもこの分野ではバルトークが有名です。

 

バルトークは各地の農村に赴き、

村民に民謡を歌ってもらい、それを録音、記譜し、研究を重ねたそうですが、

その中でブルガリアンリズムに出会います。

最初はこの異常ともいえる拍子が
技術の拙さによるミスだと思い込んで記譜していたらしい。

それくらい、奇異なリズムであり、
近隣地域の民謡と比べても類がないものだそうです。

 

その後、バルトークはブルガリアンリズムを導入した曲も書くなど、

先述の通り、クラシック音楽をブレイクスルーする素材としていくわけですが、

そんなバルトークの曲がロックをブレイクスルーするために、

エマーソンレイク&パーマーに引用されることになるというのも

何とも因果を感じます。

 

 

このブルガリアンリズムがどうして出来上がっていったのかは謎ですが、

ネットはおろか、テレビ、電話もない時代、

人の出入りというと出稼ぎか戦争くらいしかない隔絶された農村の中で

長い時間をかけて、独自にはぐくまれていったのだと思われます。

 

隔離、孤立した環境が新しい形式、文化を生む例は多く、

近いところでいえば、90年代の関西ボアダムズ周辺~TAGRAG周辺の特異な音楽、

70年代、高柳昌行さんをはじめとする日本の完全インプロ音楽や

ジャパノイズなどもそう言えるように思います。

音楽以外だと、日本独自の進化を進んだ折り畳み式携帯電話は、

絶島での生物の独自進化から例えてガラパゴス携帯(ガラケー)と呼ばれたりする。

 

隔絶環境では限られた情報、ツールしかない。

また、求められるニーズも独自であり、それらに対応していくことで、

他所では生まれえないものが生まれてくるのでしょう。

大多数が求めるものではないかもしれないが、

大多数にも訴える何かがある独特なものが。

 

 

常々、「制限」というものが新しいものにつながると考えています。

 

この考えは妻や恩師とも共有しているもので、

先日、エンニオモリコーネの本を読んでいても

「制限は新たな自由へにヒントとなることがある」との言葉があった。

ブルガリアンリズムもこの例に入るかと思う。

新しい何かを見出すためには外を見渡したくなるものですが、

逆に枠の中に閉じこもり、情報を絶つことも必要なのだと思います。

 

ですが、今の世の中ではこれがすごく難しい。

情報があふれかえり、そこら中から投げかけられてくる。
電車に乗っていても、町を歩いていても。

しかも伝達パフォーマンスの高い「映像」を介して。

また、ネット社会では自分からの情報へのアクセスもあまりにも簡単だし、

枠にこもることを悪とする考え方も流布している。

 

そんな中で「けものみち」を歩むべく、

街を離れて暮らし、テレビを持たず、SNS、ネットもほどほどといった具合にしてはいますが、

それでも情報は押し寄せてくる。

知的欲求、承認欲求、脅迫観念、惰性などで

ついつい平均化された情報やくだらない意見を自分から追ってしまう。

 

情報が貴重だった時代からすると逆説的な話ではありますが、

情報と距離を置くというのはこれからの時代に

求められるスキルになってきているのかもしれない。

 

 

白土三平の名作漫画「カムイ伝」にて、

主人公の一人カムイの剣技に

変位抜刀霞切りというものがある。

 

非人階級に生まれ、差別に苦しむカムイは、

一人、剣技を磨き、「力」でもって差別にあらがっていく。

 

剣術師匠を持つことは許されず、そもそも刀を持つことも許されない。

そんな中、野犬を相手に独自修行を重ね、

環境、情報ともに限られた中で必殺の変位抜刀霞切りが完成する。

 

いつか自分なりの霞切りを会得したいものです。

 


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さて、告知です。

 

3月は1本ライブ予定がございます。

 

3月31日(日)

西横浜エルプエンテ

Charmer's Pot vol.54

出演
TSUKAMARO (大阪)
FLOATERS
砂上の楼閣
リビドーと悪魔
ニューグリフィンズ
The Leslie Southern Tone
斉藤
Madoka Kenmochi + Yuki Tanaka
嗚咽民
RT323 

開場/開演 : 12:00/12:30
チケット : ¥2,500+1d


いまや西横浜の名物男FLOATERSモッサ君による名物企画。

私は1645から出演予定です。

 


そして、来月は4年ぶりの自主企画です!!


 420日(土)

飯能イーストコート

 にじいろのめ 企画
「のうてんふぁいら・Ⅰ」

出演
山際英樹 (ギターソロ)
斉藤新 (ベースソロ)

 展示
斉藤マミ 

出店
MCRカンパニー (お米)
チチ (スコーン)
めぐるみどり (地場野菜)

開場 12:30 開演 13:00 閉演 14:30(予定)

 2000円 (完全予約制)
ドリンク持ち込み自由


※ドリンク販売ありません。好きなものをお持ち込みください。
飲み終わったゴミについてはできるだけお持ち帰りをお願いします。

 ご予約

sleepsleepgotosleep@gmail.com

斉藤 新まで

予約はお早めにどうぞ!