2019年10月22日火曜日

三木清のこと


先日、湯治に行ってきた記事を書きました。
湯治中、数冊の本を読んだ。

その中に三木清の「語られざる哲学」という本がある。
中村橋の古本屋で見つけた一冊。

哲学には人に語られるもののほかに自身の中にしかない
懺悔ともいうべき語られざる哲学というものがある、として
自身の青春時代の内省を描いている。

その真摯な姿勢、
自身を掘り下げていく苦闘の様子に心を打たれた。


日本の哲学者といえば、
西田幾多郎を挙げる人が多いと思う。
私にとって国内外含め、一番好きな哲学者だ。

もう一人上げるとなると三木清を挙げる人が多いんじゃないかと思う。
三木清は西田幾多郎に師事していたこともあり、
なんとなくナンバー2感がある。
だからというのでもないが、あまり深く読めていなかったように思う。
そんな自分を反省した。

湯治から戻ってから、
ほかの作品「人生論ノート」「哲学ノート」を再読した。
以前読んだときは読み切れていなかった面白さに気づく。
そして反省がさらに深まる。

森有正は一つ一つの言葉をじっくりと掘り下げ、
経験として意味をつかむことを説いている。
まさしくそんな姿勢ともいうべき、三木清の深考。

「成功と幸福とを、不成功と不幸とを同一視するようになって以来、
 人間は真の幸福がなんであるかを理解し得なくなった。
 自分の不幸を不成功と考えている人間こそ、まことに憐れむべきである」 
--成功について--

「幸福は表現的なものである。
鳥の歌うがごとくおのずから外に現れて
 他の人を幸福にするものが真の幸福である」 
--幸福について--

「すべての人間が利己的であるということを前提にした社会契約説は、
 想像力のない合理主義の産物である。社会の基礎は契約でなくて期待である。
 社会は期待の魔術的な拘束力の上に建てられた建物である」 
--利己主義について--

「嫉妬は嫉妬されるものの位置に自分を高めようとすることなく、
 むしろ彼を自分の位置に低めようとするのが普通である。(中略)
 その点、愛がその本性において常に高いものに憧れるのと異なっている。
 嫉妬は愛と相反する性質のものとして、絶えずその中に干渉してくるのである」 
--嫉妬について--


いくつか挙げさせていただいたが、
その思想にはどこか日本的、東洋的なものも感じられ、
心を打つ。

kotoba」という季刊誌で以前に「孤独」についての特集があった。
いろいろな作家、文化人の言葉から孤独の意味をさぐる、といった内容。

その中で三木清も挙げられていた。
終戦直前、治安維持法で逮捕された三木清は
独房の個室でベッドから落ちて死んでいるのを発見される。
生前、孤独についても思索を残した三木清は獄中で何を思ったのだろう。

「孤独は山になく、街にある。
 一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の『間』にあるのである。」

パスカルを敬愛した三木清はパンセを読み、
一人涙することもあったという。
私にとっては三木清の残した言葉はパスカルよりも
ぐさりと刺さる。

(敬称略)

2019年10月19日土曜日

4001


長年リッケンバッカー4001を使ってきました。
といっても数本保有とかではなく、
1本しか持っていない。
それをずっと使ってきた。

手に入れたのは18の時。
クリフバートンに憧れ、どうしても欲しくて、
楽器雑誌の読者交流欄で10万で譲るという方を見つけ、
親に借金して購入した。

買い取りに行き、帰りの電車。
車窓に映る自分とハードケース。
このときのどきどき、喜びは今でも覚えている。

クリフと同じ赤の4001
シリアルからすると76年のものらしい。
私の1歳年下だ。
生まれ年が近いことからも愛着がわく。

以降、ずっと使っている。
いろんな改造やら修理を重ねながら。

フレットレスにしてみたり、フレット入れ直してみたり、
ピックアップ、ペグ、ブリッジ交換したり、
ヒップショット搭載したりなどなど。
その時々の求めるスタイルに合わせて
外観は微妙に変わってきたが
ずっと現役。

だが、ここ数年、非常に調子が悪かった。
オクターブチューニングが合わず、
チューニングも落ち着かない。
ノイズ、ビビりも多い。
原因はいろいろあるが、一番は指板の剥がれに起因する異常なネック反りだ。

20年くらい前だろうか、
夏の湿気で指板が13フレットあたりからはがれてきた。
ライブの予定があったため、応急処置として
強引に瞬間接着剤で固定し、何とかしのいだのだが、
これがまずかった。

何回か瞬間接着剤での強引な補修を重ねる中で、
接着剤のカスが接着面に残ってしまい、
若干隙間がある状態で固定され、
そのまま使い続ける中で
指板が反り返った状態で定着してしまったのだ。




写真のとおり、
5フレットあたりからいっきに反りが強くなる。
これでは当然、弦高が高くなってしまうため、
ナットをすり合わせて調整したのだが、
限界まで削り込んだことでゼロフレット辺りが
指板に軽く触ってしまう状態になってしまった。



それでもずっと使い続ける中で、
フレットも削れてきて、平たくなり、
ビビりやチューニングの不安定が出てきた。

もう満身創痍の状態。
さすがに限界だ。
そこで修理をお願いすることにした。

高田馬場のアストロノーツギターに修理の方向性を相談。
フレットを抜き、反り返った分の指板を削って平面を出し、
フレットを入れなおすという大工事をご提案いただく。
なかなか聞かないレベルの修理内容だが、
仕方ない。というかそれしかない。
お願いすることにした。

で、帰ってきました。
工期を想定してライブの合間を縫ってお願いしたのだが、
わずか2週間で上げてくれた。

指板がきれい。
ローズウッドってこんな色だったんですね。
再認識。


うーん。最高の弾き心地。
チューニングも安定し、心なしかローが少し豊かになった気もする。
アストロノーツギターに大感謝だ。

若返りました。
まだまだ現役だ。

これからもよろしく。相棒。

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さて告知。

まずNILOMETERは
今のところ年内あと2本。

■10月27日(日)
高円寺4th
”CREAKY DOOR"
w/GalakUta、田畑純子、内田静男

18:30 open  19:00 start
1500yen + 1d


■12月1日(日)
西荻窪ピットバー

ベリコンの3枚目のアルバムレコ発。
レコーディングしているって話を聞いてから結構経つ。
その間、ミルさんの病気なんかもあってのリリース。
大変でしたね。
私なりにレコ発に花を添えさせていただきます。


そしてABNORMALSもあと2本。

■11月29日(金)
新宿ロフト

名物企画グラインドカオス。
今後出演者が続々発表の予定。
楽しみ。


■12月15日(日)
新宿ロフト
MAD3のレコ発。
先日、復活MAD3を初めて拝見。
相変わらずのかっこよさ。
こちらも楽しみです。




2019年10月13日日曜日

フラメンコ


先日、といっても結構前ですが、
フラメンコギターのライブを見に行ってきた。

正確にはギター、フルート、ボーカルという
珍しいトリオ編成で、フラメンコ、ラテンのスタンダード曲をメインに、
オリジナルも数曲演奏するというライブ。

会場は旗の台のスペイン料理店。
チャージに料理代が含まれ、夕飯を食べながらライブを見るという、
普段行くライブとは一線を画したスタイル。

ジョンマクラフリンやエイブラハムラボリエルは好きですが、
モロなフラメンコには縁がなく、
ライブを見るというのは初めての経験。


実は今回ギターを弾いていたのは
昔、Bucket-Tでギターを弾いていた大河原さん。
彼が今やっている音楽を聴きたくてライブに赴いた次第。

Bucket-Tはドラムのラオさん(カズさん、現REDSHEER)とギターの大河原さん、
ベースボーカルの私という3人で結成し、
晩年はギターで富十郎さんが参加し4人編成になったものの、
不動のメンバーで1995年から2013年まで活動してきたバンドであり、
私にとって初めてのバンドでもある。

解散後、私はele-phant、カズさんはREDSHEER
富十郎さんはSWARAGAで活動する中、
大河原さんはフラメンコギターの道に進んだ。

ロック畑にいることもあり、フラメンコギターとの共演はおろか、
情報が入ってこないため、見に行く機会がなかなか無かったのですが、
先日、共通の友人の結婚があり、
それを機会に大河原さんと再会、
NILOMETERのライブを見に来ていただき、
こちらもいよいよ見に行く機会を得た。

そしてライブ。
安定した演奏。
人前に立つ以上、安定した演奏は当たり前なことではありますが、
アコースティック楽器、目と鼻の先にお客さんがいる環境で、
トリオという少人数編成というごまかしの効かない環境の中の演奏は
なかなかの緊張があるだろう。
そんな中で堂々とした演奏。

ライブ中、休憩時間があり談笑しながら
彼のギターを触らせてもらう。
フラメンコギターを触るのはもちろん初めて。
指板の広さ、平たさに驚く。
エレキに慣れている身にはかなり弾きにくい。
これでさっきの演奏をしていたのかと思うと、
彼がBucket-T解散以降に積み上げてきたものの一端を見た気がした。

お互いに音楽を続けてきたということを改めて再認識した。
先日、NILOMETERを見てもらったとき、彼はどう思っただろう。
私なりに積み上げてきたものを示せただろうか。



ライブを見ていて、彼の演奏の癖みたいなものが
変わっていないことに気づく。
グリスが早いとことか、リズムの取り方とか。
これはREDSHEERでカズさんのドラムを見ていても思う。

これからもそれぞれが音楽を続けていくのだろう。
ひょっとしたらいつかまた一緒に演奏することもあるかもしれない。
そんな時にお互いが成長を示せたら面白い。
そして、お互いの癖に気づいて笑いあえたりしたら最高だ。

妻の引き出しから出てきた昔の写真。
99年のBucket-T
大河原さん、若すぎ。


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さて、告知です。

10月はNILOMETERが一本のみ。

10月27日(日)
高円寺4th

"CREAKY DOOR"

w/GarakUta,田畑純子、内田静男

18:30 open  19:00 start
1500yen +1d


よろしくお願いします。