2023年12月3日日曜日

エンド

 

夏目漱石の小説に「行人」という作品があります。

漱石の作品の中でも哲学的要素が強めでして、

好きな作品です。

 

主人公の兄は哲学、思想の勉強に取りつかれており、

その果てに思想、さらには疑心を伴わなくては何もできなくなってしまっており、

それに苦しみ続けます。

果ては家族すらも信用できなくなってしまい、

楽天的な性格の主人公にその思いが伝わらないことにも苦しみ続けます。

 

そんな兄の印象的な言葉があります。

「自分のしていることが目的(エンド)になっていないことほど苦しいことはない。」

自分のやっていることがどこへ向かっているのか、

すべてに目的、意味を探してしまう。

でも、そこに答えが見いだせない。

 

本来はそんなものは探さなくてもいい。

というかそんな「エンド」なんて存在しないことのほうが多い。

でも、そういうことを考えずに生きることができない。

答えが得られないその苦しみはある種の無間地獄だ。

 

そこまで高尚なものではないのですが、

自分にも同じ傾向があります。

何かと考えすぎてしまい、それに苦しんでしまうのです。

 

音楽に対しても考えすぎてしまう。

手放しで楽しむことができないことがある。

常に意味を求めてしまうのだ。

音楽を作ることにも、学ぶことにも、演奏することにも、

演奏を見ること、聴くことにも。

 

 

昨日(12月2日)、VERITAS CONC75の企画で西横浜エルプエンテでライブでした。

そして、2週間前の11月18日はDAYBREAK企画で

宮ケ瀬湖畔地でのライブ。

 

この2つのライブに出演させていただき、

それを楽しむ中でなんとなく悩みが晴れた気がする。

つきものが落ちたような。

 

2つの企画に共通していた方向性は

「コミュニティの形成」のように思う。

「いい空気」「居心地」を作る。

お金、集客、企画(バンド)のブランド形成とかに主眼はない。

それらは結果論であり、目的ではない。

 

 

そのための場は公共施設(湖畔公園)だったり、

DY度の高いライブハウス(エルプエンテ)だったりする。

演出や音響は必ずしも完璧ではないかもしれないが、

自分たちで会場をつくりあげたり、

会場もコミュニティの一部とするべく協同し、

理想的な空間に仕上げていく。

 

お客様、出演者、誰もが音楽をそれぞれのやり方で楽しむ空間。

そういう場に触れ、

「楽しい」という感想だけで十分であり、

その先にことは考えなくていいのだと実感した次第。


きっと企画者の2バンドに上記のような明確な意図があるわけではないでしょう。

気づいたらそんな企画になっていたのだと思う。


エンドは求めるものではない。

気づいたときに見つけているものなのだろう。

だから、心配はいらない。

歩き続けるだけでいいのだ。


 

まぁ、きっとまたすぐに何かと考えすぎてしまう癖が顔をもたげることでしょう。

性格なので仕方ない。

でも、今はなんかすっきりしてる。

そんな2企画に感謝です。

 



 

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さて、来週は地元コンサートです。

 


今年最後のライブとなります。

町場からは遠いですし、

演奏時間15分と短めではありますが、

よろしければ名栗の紅葉を見にいらしてください。

 

 

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