2024年5月17日金曜日

RC500

 

先日、新しいエフェクターを買いました。

BOSSRC500というルーパーの中でもちょっと上位の機種。

久々に奮発しました。

 

このRC5002つのトラックにループフレーズを録音でき、

それらトラックは自動的に同期されてズレることなく再生される。

また、それぞれのトラックにリバース再生などの
特殊エフェクトをかけることもでき、

リズムトラック(ドラムトラック)もプリセットされていて、
多数のリズムパターンが再生可能。

そして、そのリズムに合わせて演奏、録音も可能で、

リズムのテンポチェンジも可能。

テンポを変えると録音した演奏のテンポも自動で変わる。

 

そして録音型式は最新技術の32ビットフロート録音。

個人的にはこれが購入の動機でして、

16ビットや24ビット録音の他機種ではオミットされてしまう音域まで、

しっかりと取り込み、再生することができる。

 

 

まぁ、ざっと機能を挙げていくと上記の感じでして、

興味のない人、ルーパーを触れたことのない方からすると、

何の話やら。。といった感じかとは思いますが、

とにかく多機能なのです。

 

 

で、購入後、いろいろと試したり、練習したりしてきたのですが、

 

・・・手放すことにしました。

 

録音形式の恩恵で音質はクリアだし、

2つのトラックの同期もありがたい。

今までは2つのルーパーを並べて、
同じタイミングでスイッチを入れなければいけなかったところが、

そんなこと全く無視して演奏してもかっちりとそろう。

 

でも、この「かっちり」が面白くない。

機械が作ってくれる「かっちり」は私が演奏しているものではない。

 

音質の良さは素晴らしく、

そのためだけに使い続けようとも思ったのですが、

それもそこまで必要なのだろうか・・・
という元も子もない気持ちになってきた。

 

「録音」した時点で音は模造品になる。

本当の演奏の空気、倍音、音圧、そういったものは

大なり小なりオミットされる。

クリアな音質であることはありがたいが、

他要素のデメリットを思うと、そこまで重要ではない気がしてきた。

32ビットフロート録音のシンプルルーパー、
どこか発売してくれないかな・・・)

 

また、多機能すぎることも引っかかる。

こんなにたくさんの機能はいらない。

ラーメン注文したらチャーハンと餃子、杏仁豆腐まで出てきて、

一瞬うれしいけど食べきれない。そんな感じ。

食べたかったのはラーメンだけだ。

 

 

最近のエフェクターはとにかく多機能なものが多い。

もちろん悪いことではないのですが、

行き過ぎると、音楽を演奏しているのは、

演奏者(人)なのかエフェクターなのかわからなくなってくる。

 

例えば、RC500に内蔵されたドラムトラックに合わせて、

フレーズを弾いて、テンポを変更したりして緩急をつけ、

最後にトラックエフェクトをかけて締める。

この場合、これを演奏しているのは私なのかRC500なのか。

私がやっているのは「演奏」ではなく「操作」という気がしてくる。

 

 

AI技術が加速的に進歩している中、

本当は世に出ているもののさらに先の機能を持つエフェクターも
作ることもできるのだと思う。

例えば、勝手にマイブラの音になるとか、

さらにはギターで1音弾いたらすぐに曲が出来てしまうとか。

(実際、DTMの分野では作曲アプリなどは世の中に出回っている。)

でも、そこまでいったらエフェクターではない。

 

エフェクターメーカーさんは新製品を企画する中で、

どこまでがエフェクターと扱ってもらえるのかという
線引きに悩んでいるのではないだろうか。

 

あまりにも高機能すぎると

プレイヤーの想像力を刺激するのではなく、

想像力を終わらせてしまう。

そのギリギリをつかなくては新エフェクターとして人気を博さないだろう。

 


 あまりにも特徴が強すぎて想像力を奪う場面もある。


KORGの製品でカオスパッドという名作モジュールがある。 

タッチパッドを指で触れたり叩いたりするこで

入力した音に対して思いもよらないエフェクトがかかったり、

サンプリングできたり、直観的にその変化を操作することができる。


凄く面白くて個性的な機材で、

例えばルインズの吉田達也さんはドラムの演奏中に足でパッドをふれることで

ノイズを出し、「点」の連続になりがちなドラムの演奏に

「線」となるノイズを絡めてすごく面白い表現をなさる。

 

だが、このカオスパッドの操作性の良さやパフォーマンス性、
シンセやサンプラーとの親和性から、

ノイズごっこ、インプロごっこにも多用されることになる。

そんなわけで無個性なノイズプレイヤーがこぞって使う。

この時、プレイヤーはカオスパッドに使われてしまっており、

聴衆はその人ではなくカオスパッドを聴いている。

 

 

灰野敬二さんのインタビューでの言葉を思い出します。

 

「だれもがなぜそのエフェクターが出来てきたかを考えずに使っている。

本来は演奏者に出したい音があり、

それを実現するために技術者が苦心して作ってきたものこそがエフェクターだ。」

 

やはり演奏者主体でありたいものです。

エフェクターはすごく面白いし、大好きです。

でも先に表現ありきで使いたい。

 

 

エフェクターにはまって早30年。

思えば、ずっと手元に残しているエフェクターって少ないかも。

まぁ、こうしていろいろ試して、売って、買ってっていう
行脚行為が楽しいんですけどね。



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