2024年9月27日金曜日

5度コードを重く聴かせる裏技(微分音)

 

4年ほど前、手持ちのベースをフレットレス化しました。

目的は「12音階からの離脱」と
偉そうなことが当時の記事に書いてあります。

 

半音以下の音程である“微分音”の研究、
というか遊びはその後も続けており、

最近、ちょっと面白い使い方に気づきました。

 

今回はそんな発見の話です。

 

 

その前に、微分音の簡単な説明をさせていただきます。

ドレミファソラシドは7個の音
(最後のドを入れると8音)で構成されていますが、

西洋音楽ではさらに12個の音に分解されます。

 

ピアノの白鍵だけを弾くと、ドレミファソラシド、
つまりメジャースケール(イオニアンスケール)が弾けますが、

ピアノには白鍵だけでなく、黒鍵も存在します。

黒鍵は白鍵と白鍵の間に挟まっており、半音ずれた音となります。

ドからシまで白鍵が7個、黒鍵が5個、合計12音ということになる。

つまり、ドレミファソラシ(ド)は12個の音に分解できる。

 

基本的に西洋音楽はこの“半音音程”に則っており、

一般的な楽譜はこの半音までの構成で書かれています。
(後述する現代音楽では微分音を含む超難解な楽譜も存在します。)

 

だが、音は半音以下にも分けることができます。

というか無限に分けることができます。

ピアノやフレッテッドの楽器では特殊な奏法を使わないと、

こうした半音以下の分割音程は発音できないですが、

フレットレス楽器や管楽器では分割が可能です。

 

この半音以下の音程が“微分音”でして、

4分音、6分音などと呼ばれたりします。

 

微分音は民族音楽(邦楽を含む)では普通に使われますし、

西洋音楽でも現代音楽では
積極的に“微分音”を使っている曲が存在しますが、

いわゆるポピュラー音楽ではあまり使われない。

というのも、この微分音、曲の中に組み込みにくいのだ。

どうしても不安定な響きになってしまうので、

必要以上に不気味になってしまったり、
単純に下手な演奏に聴こえてしまうことになりがち。

そんなわけで、リード演奏などでは
例えばギターソロのチョーキングなどで導入されるが、

アンサンブルの中に入れようとすると”異物“になりやすく、

敬遠されてしまうのだ。

 

 

 

前置きが長くなりましたが、

そんな微分音を自分なりに使うことができないものかと考え続けておりました。
(そんなに大仰に言うほどでもないんですが。)

そして、最近見つけたのが下記となります。

 

 

2音コードの中で一番安定していると言われるのが5度コードです。

パワーコードなんて言われたりもします。

メタルなどで、ひずませてブリッジミュートでゴンゴン弾く時は
5度コードが大半かと思います。

重さが強調されるこの奏法ですが、

これに微分音を混ぜるとさらに重みが演出されることに気づきました。

 


例として、MELVINSJOAN OF ARKを通常の5度コードと

5度の音を4部音落とした、言うなれば4.75度コードで弾いてみます。

 

まずは5度です。

こちら」に音源がリンクしていますので、お聴きください。
(DROPBOXへのリンクですので安全です。念のため。)

ベースでのクリーントーン演奏なので原曲と雰囲気は違いますが、

まぁ、基準としてお聴きください。

 

 

 

次に4.75度。

こちら」にて聴いてみてください。

 

どうでしょうか。

微妙ではありますが、少し重みが増したように感じませんか?

なんかすっきりしない違和感があり、それが濁り、重みを感じさせます。

 

なんでこういう聴こえ方になるのか、 

ちょっと分析してみます。


5度コードというのは、先述の通り、安定したコードでして、

ルート音に対し整数次倍音にあたる5度の音でコードが構成され、

含まれる倍音も(基本的に)整数次倍音がならびます。

 

それに対し、4.75度の音は非整数次コードとなっており、

そこに含まれる倍音群もやはりルートの音に対し、

非整数次の倍音となってきます。

それらが、ある種の異物として、

重く、うるさく感じさせるではないかと思います。 

 

中村明一さんの「倍音」という本
(すごく面白いおすすめの名著です。)によりますと、

人間の声は倍音の含み方にが個性があるそうです。

 

男性歌手で言うと、

整数倍音を多く含むのは郷ひろみ、氷川きよし

非整数倍音を多く含むのは森進一、桑田佳祐

 

女性歌手だと、

整数倍音が美空ひばり、浜崎あゆみ

非整数倍音が八代亜紀、宇多田ヒカル

 

整数の方はどちらかというと美しくパーンとはじけるように響き、

非整数の方は濁って重い。
そのおかげで心に引っ掛かりやすく、感情的でもある。


ちなみにタモリは整数次倍音、浜ちゃんは非整数次倍音です。

落ち着きを感じさせるタモリの司会と、

「けっかはっぴょ~!」に感じるような注意喚起力を持つ
浜ちゃんの司会、

その違いの秘密が倍音にあったりするわけです。

 

今回の4.75度コードの響きも、

濁りが重さを演出してくれているのではないかと思います。

 

 

ちなみに、微分音を混ぜてコードを重くする方法は

5度以外ではここまで効果が出ません。
(この辺、主観なので微妙なところではありますが。)

 

というのも、先述のとおり5度は安定度が高いので、

4.75度を弾いても、錯覚的に5度に寄せて聴いてしまいます。

つまり「濁った5度」に聴かせることができる。

 

ですが、他のコードですと、

”無意識に寄せて聴く“まで行きにくいので、

単純に音痴なコードとして聴こえがちなのだと思います。

 

 

以上です。 

まぁ、主観に基づく発見ですので、

万人に伝わるかどうかは自信がないですが、

微分音を音楽的に使う手法として、
自分なりに、少しヒントをつかんだように感じています。


現在、この4.75度コードを自曲に生かすことができないかと模索しております。
次回ライブまでに間に合うかな・・

 


さて、そんな次回ライブはこちらです。



 

にじいろのめ 企画

“のうてんふぁいらⅡ”

 

112日(土)

飯能イーストコート

 

演奏:

斉藤新

大河原康夫

パパライオン

 

展示、物販:

斉藤マミ

 

開場:12:00

開演:12:30

料金:2000円(おやつ付き)

※完全予約制です。

 予約はこちらまでどうぞ。


sleepsleepgotosleep@gmail.com

斉藤新

 

ドリンク持ち込み自由です。

というか会場でのドリンク提供ありませんので、
好きなもの好きなだけを持ちこんでください。

ただし、ごみはお持ち帰りをお願いいたします。

 

お土産として、

現在作成中の斉藤新2ndアルバムから、

3曲入りのデモCDRを差し上げます。

(受け取ってくださいませ!)


ご予約、お待ちしております!!

 

 

 

 

 

2024年9月20日金曜日

自信と慢心

 

今回の記事は

最近になって、ようやく自分の中で整理出来てきた話です。

備忘、自戒のために記事にさせていただきます。

 

 

以前書いたかと思いますが、

今年は介護施設の慰問演奏などおこなっております。

いや、正確には「おこなっていた」です。

ある事件があって、自分を見直す必要を感じ、今はやめてます。

 

慰問演奏を行おうと思った経緯は

「自分の音楽は複雑ではあるが、ある程度の普遍性をもっているはずだ。

それを確認したい」という思いから、

ふだん音楽を聴かない(少なくともロックは聴かない)であろう、

ご年配の皆様の前での演奏に挑戦してみたく思った次第です。

 

最初に慰問演奏をしたのは3月でした。


全く顔も知らないご年配の皆様30人ほどのまえで演奏。

なかなかに緊張します。

ですが、ありがたいことに好評をいただき、

施設の方からも、また来てほしいとのお言葉をいただきました。

 

もちろん、お聴きの皆さんが知っている曲は一つもありません。

そんな中で受け入れられたのは本当にうれしかったです。

 

 

 

その後、6月に再演奏のお話をいただきました。

 

2回目ということもあり、少しリラックスして臨めましたが、

・・・まったく受けませんでした。

 

演奏を続ける中で

聴衆の皆さんの気持ちが離れていくのが手に取るように感じられ、

どんな曲をやっても、こっちに引っ張れない。

もうどうにもならなくて、途中で放棄して帰りたくなるくらい。

ここまでの気持ちは過去の音楽歴の中でも味わったことがないレベルでした。

皆さん、静かに聴いていらっしゃるが、ぜんぜん響かない。

 

演奏におかしな間違いはありませんでした。

音響にも変なところはなかったはずです。

でも1回目とは全然違う。

なにがよくなかったのか・・・

 

 

 

その後、反省を重ねていく中で気づきました。

私は”自信”というものを取り違えていたのだと思います。

 

2回目の演奏に赴くにあたり、

1回目の成功があったので無意識で慢心していました。

お話をいただいた時点で、

すごくいやな言い方をすると
「そうですか、また聴きたいですか。いいですよ。やってあげますよ」的な。

(もちろんこんな風に思ってはいませんが。)

 

1回目の結果に対し、自信を持つべき点は、

最初に自分が考えていた

「普遍性をもっているはずだ」という考えが確認できたことに対してであり、

「受けた」ことではない。

 

“自信”とは自分の中に見出すものであり、

他所の評価に対して持つ“自信”というのは、不完全で危ういものだ。

だって「自」じゃなくて「他」発信なんだから。

「他」によってもたらされた「自信」っぽいものは

どこかで”おごり””慢心“にすり替わってしまう。

 

 

先述の通り、聴衆であるご年配の皆さんは

私の曲を全く知らない。

だからこそ、こうした機微は明らかに伝わってしまう。

「いい曲かもしれないけど、なんか楽しくない」といった感じに。

 

これはレコーディングには表れないだろう。

でも、現場ではしっかりと見えてしまう。

そして聴き手の心に伝わる。

 

 

故黒田鉄山先生という武術家がいます。

黒田先生の抜刀は目に見えない速さです。


 

演武をなさるとき、

黒田先生はどういう心境で臨むのかインタビューに答えています。

 

この術を残してくれた先祖、自分に伝えてくれた祖父、両親に感謝を持ち、

どうかうまく刀が抜けてくれますように見守りください、と
祈願しながら臨むとのことです。

 

全く境地が違う。

でも、高い境地ゆえの難しい理念や複雑な思想があるわけではなく、

そこにあるのは謙虚、感謝という当たり前なことだ。

 

何に臨むにしても、この気持ちを忘れないようにしなければいけないな。

改めて思いました。



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さて、気持ちを切り替えて告知です。

 前回記事で書きました通り、

11月にのうてんふぁいらの第2回をやらせていただきます。



前回同様、音楽、絵、おいしいもので
居心地のいい空間を作ります。

ぜひお越しくださいませ。


あまりぎゅうぎゅうで見ていただくもの好きじゃないので

完全予約制になっています。

予約は下記メールにてお願いします。

sleepsleepgotosleep@gmail.com

斉藤 新


よろしくお願いします!



 

 

2024年9月5日木曜日

のうてんふぁいらⅡ

 

毎朝の坐禅中、ちょっと前までは夜明けとともに
ヒグラシの大合唱が聞こえていましたが、

今では秋の虫の声に切り替わっています。

ぼちぼち夏も終わりですね。

 

久々のブログとなります。

夏の間、特に何かしていたでもなく、

普段通り、練習、模型、坐禅、読書で過ごしておりました。

 

お盆前後から仕事が忙しくなり、

都心に出ることが増えてます。

都心は人が多いので疲れます。

疲れるというより、消耗するという表現のほうがいいかな。

仕事を終えて、山の方に戻ってくるとホッとします。


夏目漱石の「草枕」にこんな文章があります。

 

「自然のありがたいところはここにある。

 いざとなると容赦も未練も見せないかわりには、

 人によって取り扱いを変えるような軽薄な態度は少しも見せない。」

 

そんな自然の中の方がやっぱり落ち着きます。
ありがたい。

もっとも、最近は人が多いといっても、みんなスマホに没頭していて、

互いを無視しあっている群衆なので、

人によって取り扱いを変えるようなこともありませんけどね。

余計気味が悪い。

 

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さて、季節が秋に移りつつありますが

今秋にまたイベントを開催いたします。


 

にじいろのめ企画 ”のうてんふぁいらⅡ“

112日(土) 東飯能イーストコート

 

出演:
斉藤新
大河原康夫
パパライオン

 

展示、物販:
斉藤マミ


料金:2000円

 

 


4月に続き、妻とのユニット”にじいろのめ”による企画、
今年二回目の”のうてんふぁいら”です。

1年に複数回イベント企画やるなんて、20代のころ以来かな。

今回も音楽と絵を主軸に居心地のいい空間を作ります。

 

詳細はまだ決め切れていないのですが、

前回同様、昼間のイベントとなります。


音楽ライブと妻の作品展示。

 音楽のほうは、

今回は大河原康夫さんとパパライオンとの三つ巴です。

 

大河原さんは、知る人ぞ知る元Bucket-Tのギタリスト。

Bucket-T解散後はフラメンコギターの道に進み、

今ではギター講師を生業にしています。

最近はエレキガットギターでのソロ演奏を開始しており、

その初ライブとなります。

 

まさかの元Bucket-T共演です。

いや・・・全然大した話じゃないんですが。

 

 

そしてパパライオン。

比較的ポップロックなシーン(?)での活動が多い彼らなので、

お互い活動歴は長いのに
私の過去バンド歴の中で共演したことは1度しかありません。
(妻の企画ライブで活動初期のele-phantで対バンさせていただきました。)

ですが、実は付き合いは長く、ぼちぼち30年になります。

 

というのも、パパライオンのメンバーも私も
練馬区江古田の武蔵大学の出身でして、

学生時代からの付き合いなのです。

さらに、妻である斉藤マミも武蔵大学出身。

Bucket-Tも武蔵大学内のバンドとしてスタートしてまして、
大河原さんも武蔵大学。

 

そんなわけで今回の企画は武蔵大学の同窓会といった状態になっています。

30年ごしでの「いま」を見せ合うという意味でも楽しみです。

ご覧になる方には関係のない話かもしれませんが・・・



今回も前回同様に完全予約制となります。

前回同様にお越しいただいたお客様に楽しんでいただけるよう、

ケータリングやお土産なんかも検討しておりますので、

どしどしご予約お願いいたします。

 

あまりぎゅうぎゅうで見ていただくのも好きじゃないので、

人数に限りを設けています。

お早目のご予約をお勧めいたします。

 

では、よろしくお願いします!