2020年12月14日月曜日

ジョロウグモ

 

私の住んでいる辺りでは、

911月になると、ジョロウグモの巣がいっきに増えてくる。

 

近所を歩きながら上を見上げると、

電柱や木など、幾何学模様の巣がたくさん見当たる。

 

当然、我が家にも巣が張られた。

軒先に特大の巣。真ん中にド派手な色彩の巨体。


最初はぎょっとしたものでしたが、

だんだん慣れてくるものだ。

家を出るたびに何の気なく確認しているうちに

親しみがわいてくる。

 

せっせと巣を張りなおしたり、

巣にくっついた小虫を回収する様等見ていると、

ついついぼーっと眺めてしまったりする。

ちょっとした憩いとでもいう感じだ。

 

そのうち、名前まで付けだして、観察することになる。

その名はデーハー。

派手な柄から、妻との雑談の中で決定。

何ともくだらないが、まぁそんなもんだろう。

 

 

12月に入り、徐々に寒さが厳しくなる。

気が付いたら、近所の巣は大半が無くなっている。

調べてみたところ、ジョロウグモは越冬できないらしく、

冬とともに自然と土に還っていくそうだ。

 

デーハーも明らかに動きが悪くなっていく。

以前は息をかけると、大慌てで巣の端に移動したりしたものだが、

少し、足先を動かす程度になった。

 

だが、相変わらず巣の真ん中でいつもの姿勢でとどまっている。

美しい巣にド派手な巨体。

おぞましくもありながら、凛としていて、

なんだか尊い。

 

寒さは厳しさを増し、風は冷たく、

餌となる羽虫もほとんどいない。

だが、いつもの姿勢。

デーハーは足掻かない。

 

ふと、種田山頭火の自由律俳句を思い出す。

「蜘蛛は網張る私は私を肯定する」

 

この句を詠んだときの山頭火の心境はわからないが、

泰然としたデーハーの姿に照らした時、残念ながら、

私は自分を肯定する境地には至れない。

全然届かない。

 

寒さが増してきて、気が付くと巣が空っぽになっていた。

気になって探すと、縁側の下にじっとしているデーハーを見つけた。

 

数日後、繭のように糸玉を作り、中に卵を産んだ。

守るかのように卵の横でじっとしている。

そして、今朝、固くなって動かなくなった。

 

デーハー、お疲れ様でした。

来年、貴方の子供たちに会うことだろう。

楽しみだ。

あんまり家の中には入ってきてほしくないが。

 

 

今日は冬晴れの快晴。

彼女の最後の網はまだ軒にかかったままだ。

なんとなく、このまま年末まで残しておこうかと思う。

 

 

 

 

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