いままでいくつかのバンドをやってきましたが、
思えばレギュラーチューニングで演奏するバンドを
経験したことがない。
楽器をやられない方のために
ギター、ベースのチューニングについて軽く説明しますと、
通常のチューニングはレギュラーチューニングと呼ばれ、
一番低音の弦(ギターで6弦、ベースは4弦)をE音に合わせる。
これを落としてチューニングすることを
落とす量に合わせて○音下げチューニングと呼びます。
チューニングを下げることで音の立ち上がりは失われるものの、
低音由来の迫力が得られるため、
90年代頭辺りからラウドな音楽性のバンドに
積極的に導入されていった。
PANTERAやHELMETのDチューニング(1音下げ)、
CATHEDRALやCROWBARのBチューニング(2音半下げ)などは
私の世代だとエポックメイキングなチューニングであり、
代表的な例かと思います。
上記の通り、チューニングを下げると迫力が増す。
これはライブだと結構顕著に表れる。
低周波の音は肺の中の空気にも響き、揺らすそうだ。
それにより、リスナーは聴いている音以上の迫力を感じる。
ちょっと極端な例だと、BORISのライブでは
低音+高音圧で体、さらには会場が物理的に揺らされる。
個人的にはこれを演奏に盛り込んだのは
BORISの大発明だと思っている。
昔、彼らのサウンドチェックを手伝ったとき、
「チューニングどうしますか?」と聞くと
「Dで合わせて」と言われ、
意外と下げないんだな、なんて思ったら
さらに1オクターブ下のDだったことがある。
まさかの7音下げ。
そこまで落とすとどんな太い弦を使っても
張りがユルユルになってしまい、
楽器を下に向けて弾かないと音にならない。
演奏が成立するぎりぎりのレベルだ。
曲によってはそんな極端な導入もしているのだ。
恐るべし、というか狂ってるというか・・・
さて、冒頭に書いた通り、
過去の自身のバンド歴でもレギュラーチューニングは経験がない。
ABNORMALSが音域的には一番高いが、
それでも半音下げ。
低いところだとBucket-Tやele-phantでは
2音半下げになっていた。
その経験が長いことから自分にとって一番親しみが深く、
NILOMETERも2音半下げでやってきた。
ただ、最近いろいろ試す中で、
いまさらながらレギュラーチューニングの面白さを感じている。
やはり音の立ち上がりが良く、ハーモニーがきれいに得られるのだ。
重い音楽を愛好してきたこともあり、
物足りなさを感じないでもないが、
音をたくさん重ねるNILOMETERの音楽には理想的。
ギターやベースがEチューニングになった歴史、理由は知らないのだが、
やはりそこにはそれなりの理由があるということなのかもしれない。
また、一概に重い音楽に適さないというわけでもない。
要は音作りと曲作り次第だったりする。
レギュラーチューニングでも重さを感じる曲を少しあげてみる。
まずはこちら。
MELVINS
“Joan of Arc”
うーん重い。
音作りよりも曲と雰囲気による部分が大きいのかな。
大好きな曲です。
メジャー時期のMELVINSにはレギュラーチューニングでも重い曲が多い。
さすがMELVINS
弘法はチューニングを選ばず。
次はこちら
SAINT
VITUS “CHILDREN OF DOOM”
これも大好きな曲。
一般的にいうと「こもった音」「よくない音」かと思いますが、
この音とルーズな演奏が重さを生んでいる。
SAINT
VITUSの曲は概して音域以上の重く、だるく感じる。
このバンドにしか出せない雰囲気だと思う。
お次はメタル大御所。
METALLICA “HARVESTER
OF SORROW”
曲もさることながら、
音作り(レコーディング技術も含む)によるところが大きいかな。
ミキシング、マスタリングでの音圧戦争の走りかも。
このアルバム、ベースが聞こえないことでも有名。
ベースが無くても音作りとプロダクション次第で
重さが演出できる例。
以降は半音下げ。
まずは半音しか下げていないとは思えない重さの例です。
LOUDNESS “FIRESTORM”
この曲のイントロ、キーチェンジ前は
半音下げの恩恵を使わずにキーはF#
なのにしっかりと重い。
先ほどのMETALLICAとは違い、
ベースをしっかり聞かせることで重さを出している印象。
すごくタイトな演奏。
タイジ、本当にうまい。
このころ20代でアナログレコーディングだったことを思うと、めまいがする。
私はこの曲がいまだに完全に弾きこなせない。
マサキのねっとりしたボーカルも重さに寄与している。
歌詞も意味不明で最高だ。
「滅びゆく地球に隙間風吹く」て。
最後は手前みそですが。
ABNORMALS “イニシエバイオレント”
私が加入する前の楽曲です。
重いというより、不思議と軽く聞こえない例。
キーはベースで3弦6フレット(半音下げでD音)となり、
一番低いオクターブの中で一番高い音にあたる。
(わかりにくい表現ですみません。)
こういう場合、普通は曲のキーを半音上げて
最低音であるD#に合わせるところなんですが、
歌を基準に曲を作る、アブならではの選択。
加入後、音を取ってみて驚かされた曲です。
レギュラーチューニングの奥深さを感じている今日この頃、
制約を感じないでもないのですが、
制約の中でこそ出てくる面白さというものもあると思ってます。
コロナの影響で引きこもりがちということもあり、
いろいろ試してます。
0 件のコメント:
コメントを投稿