2022年5月16日月曜日

THE HEAD HUNTERS  "SURVIVAL of the FITTEST"

 

マイルスデイビスは自叙伝の中で、

JBやスライの音楽を「リズムの塊」と表現をしている。

塊という位だから、聴いているだけで体が動いてしまうのかと思う。

JBもスライも好きですが、私はそこまでのものは感じ取れない。

 

本当のブルース、ファンクは

黒人にしかわからないといった内容も書いていますので、

ファンクの本当の魅力は日本人にはわからない、

もしくは感じ取りにくいのかもしれない。

 

だからというわけでもありませんが、

実は私はファンクが苦手。

というか良さがあまりわからないのだ。

いわゆるミクスチャーロックは好きですが、

モロなファンクはたくさん聴けない。

 

「ファンクがよくわからない」って言うのは、

ベーシストとしてちょっと勇気がいりますが、

ひょっとすると、同じように思っていても、

なかなかカミングアウトできない日本人って結構いるんじゃないでしょうか。

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、

今回は愛聴盤紹介 第6回目。

THE HEAD HUNTERS “SURVIVAL of the FITTEST”です。

 


HEAD HUNTERSといってもハービーハンコック名義のものでも、

ましてやシュミーアのジャーマンスラッシュでもありません。

 

ハービーハンコック名義で作成されたアルバム“HEAD HUNTERS”は

超有名な名盤で、私も大好きです。

その後もハービー抜きでバンドは継続しており、

このアルバムはハービー抜きのTHE HEAD HUNTERSとして1作品目となります。

 

先述の通り、ハービーはいませんが、

根幹となるポールジャクソン(ベース)、

ベニーモウピン(主に管楽器)、

ビルサマーズ(各種パーカス)は健在。

さらにギターのブラックバードマクナイト、ドラムのマイククラークの5人組。


ハービー時代はギタリスト無しで、

そこをハービーが鍵盤でカバーする感じでしたが、

ギターが入り、ファンクとしてのわかりやすさが増しています。

 

このアルバム、「スペースファンク」なんて呼ばれることもあるそうです。

スペースとか言われると、ついHAWKWIND的な

「宇宙音」が入っているのかと思いがちですが、

そういうわけでもありません。

なにがスペースなのかよくわからないのですが、

何となく永続しそうな曲が多いので、

その辺を「スペース」と形容しているのかもしれません。

曲によってはFAUSTのようなリズムの永続を感じます。

 

基本的に曲はFUNKなんですが、

なんというか都会臭さというかアメリカっぽさが薄いのです。

より広大なものを感じる。

不思議な異国感、土着感が漂う。



変なたとえをしますが、濃い目のFUNKって

着飾ったでかい黒人さんに囲まれて、

真っ白い歯を見せてニコニコしながら

「たのしもーぜー」と肩を抱かれているような気になります。

そこに気おくれしちゃいます。

想像しただけで作り笑いに必死になります。

 

それに比べ、HEAD HUNTERSは、

私には残念ながら欠けている要素をもつミュージシャンたちが

アフリカ(かどこか)の森の中で祭りをやっているのを

傍らで見ているような感じがするんです。

知らない儀式を少し敬虔な目(耳)で見ているのが快感なのです。

このアルバムにもその感じが充満しています。

 

 

冒頭に書いたマイルスの言葉ですが、

最初に読んだとき、ちょっとショック受けました。

私のファンク苦手が証明されたみたいで。

 

でも、その後に考えが変わりました。

逆に彼らには日本人の持つワビサビの感覚は

わからない(つかみにくい)んじゃないかな。

6070年代、ジャンルを問わず、海外のたくさんのミュージシャンが

東洋の思想に憧れ、インド音楽、日本の禅を

勉強したなんてことがありましたが、

彼らからすると「日本人の感覚」は

それはそれで憧れるものなんでしょう。

 

要は文化、歴史の違いであって、

残念に思ったり、誇ったりするような話ではない。

 

ただ、純日本人の私にも響くこのアルバムのファンクは

きっとすごいものなんじゃないかなと、

わからないながらに思うのです。

 

 

 

 

 

 

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